まずこの本の総合的な評価はなかなか良かった。5段階で言えば4はつけられる。少なくともしばらくの間は捨てられることなく本棚の片隅におかれているだろう。
『要約』
この本でコンセプトにしているのは富裕層に対するマーケティング……同著の言葉を借りれば「お金持ちをお得意様にする方法」らしい。
第1章から第5章までの構成になっており、第1章ではあまり知られていないことだが日本が富裕層を多く抱えている国であり(人口に対して一億円以上の資産を持つ富裕層は1%、約130万人)、しかも今まで歴史的な要素からこれらの層に対して十分なマーケティングが行われず市場拡大の余地があることなどについて触れている。
第2章では現在日本に存在する富裕層の特徴などについて触れいくつかの分類に分けて説明できることを示している。その分類は大別すると一代で財を成したニューリッチと、祖先の代からその財産と教養を受け継ぐオールドリッチの二つである。
これらの特徴を説明しつつ日本における富裕層の移り変わりを細かに分析している。
続く第3章では第2章で触れたニューリッチを更に細分化しそれらがどのような物に対して購入意欲を持っているかなど具体的なマーケティングの方法論が展開され始める。
第4章では更に具体的にビジネスの指針や営業方法について触れている。またプライベートバンクなどを初めとした資産運営や子供に対する教育における海外の有名校への留学などについても説明しており富裕層の感覚を知る上で役立つ情報が見られる。また、この章では前述される方法を実践した実例が挙げられており著者の研究が深いことがわかる。
第5章はこれらを総括し富裕層がこの後経済について非常に大きな影響力を持つことを予見する文章で締めくくられている。
『考察』
この著作単体でも示される方法には説得力があり、著者の富裕層に対する研究の成果は十分に有効であることは理解できるが恐らくこの著作におけるもっとも素晴しい点は富裕層に対する意識の改善と興味関心を抱かせることにあると思う。
著作の中でも触れられていることだが、富裕層に対する庶民の意識は半ば敵対感情に近いものがある。そのため歪んだ視点を持っている可能性が非常に高く、自らの見聞を狭める原因となっている。これ以上の私見は前述したブログの信条にそぐわない可能性があるが……少なくとも人間は貧しいよりも富んでいるほうが良いと思う。あくまでも個人的な思想であり、断定するわけではないが。富裕層になりたければやはり富裕層の興味の対象や思想について触れるのは重要なことだと思う。
『感想』
非常に興味深い内容だった。考察でも記述したように特にこの著作を機会として他の情報についてアンテナが高くなるという影響について高く評価したい。
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